【30秒で分かる】
多良間島は日本の高級黒毛和牛の“原点”ともいえる離島。島では子牛生産が盛んで、牛セリを経て全国の肥育牧場へ渡り、鹿児島黒牛や宮崎牛などのブランド和牛へ成長します。島内で最後まで育てられた希少な和牛は「多良間牛」と呼ばれ、宮古地域ブランド「宮古牛」の重要な生産地にもなっています。
多良間島の黒毛和牛物語|日本の高級和牛はこの小さな島から始まる
宮古島と石垣島のほぼ中間に浮かぶ人口約1,100人の離島・多良間島。この静かな島は観光地として大きく知られてはいませんが、日本の和牛産業において極めて重要な役割を担っています。実は多良間島は、“高級黒毛和牛の原点”とも言える場所。島では人の数をはるかに超える牛が飼育され、広がる畑の風景の多くは牧草地です。ここで育つ牛たちは、やがて全国へ渡り、日本各地のブランド牛へと姿を変えていきます。
多良間島は「和牛が生まれる島」
多良間島の畜産は、一般的な牧場のイメージとは少し違います。島の中心は「肥育」ではなく繁殖(子牛生産)。母牛は島内で大切に飼育され、自然に近い環境の中で出産します。生まれた子牛は約8〜10か月、多良間島の牧草と海風の中で育ちます。この時期に形成される骨格や体質が、その後の肉質を大きく左右すると言われています。
つまり多良間島の役割は、和牛の完成ではなく和牛のスタート地点。ここでの育ち方が、日本の食卓へ届く高級和牛の未来を決めているのです。
牛セリ|島の一年が評価される日
多良間島で最も活気に包まれる瞬間が「牛セリ(子牛競り市)」です。農家が育てた子牛が一堂に集まり、鹿児島・宮崎・九州各地などから訪れた肥育農家や業者が価格を競います。番号が呼ばれ、価格が上がるたびに会場の空気が変わる。農家にとっては一年の努力が評価される大切な日です。
セリでは血統だけでなく、歩き方、骨格、毛並み、落ち着きなど細かな要素が見られます。評価が高い子牛ほど高値が付き、全国の肥育牧場へ旅立っていきます。こうして多良間島の牛は、島を離れ新しい物語を歩み始めます。
多良間島を旅立った牛はどこへ行くのか
落札された子牛は主に九州各地へ運ばれます。
- 鹿児島県
- 宮崎県
- 熊本県
- 兵庫県など
ここから約18〜20か月という長い肥育期間が始まります。栄養管理、飼料設計、環境管理を経て、牛はゆっくりと肉質を形成していきます。そして最終的にブランド牛として市場へ出荷されます。
つまり、私たちがレストランで食べている高級和牛の中には、多良間島生まれの牛が含まれている可能性があるのです。
全国ブランド和牛へつながる“出生地”
多良間島生まれの牛は、育った地域によってブランド名が変わります。
- 鹿児島黒牛
- 宮崎牛
- 九州産黒毛和牛
- 各地域ブランド和牛
和牛のブランドは「どこで肥育されたか」で決まるため、出生地が多良間であってもブランド名は移動先になります。しかし肥育農家にとって重要なのは“素質の良い子牛”。多良間産は骨格が強く健康的に育つと評価され、安定した人気があります。
言い換えれば、多良間島はブランド牛の“見えない基礎工場”なのです。
多良間牛とは|島で完結する希少な和牛
では「多良間牛」とは何か。
多良間牛とは、
多良間島で生まれ、島内で肥育され、出荷まで完結した黒毛和牛を指します。
多くの牛が子牛の段階で島外へ出る中、島内で最後まで育てられる牛はごくわずか。離島では飼料コストや輸送条件の制約が大きく、肥育まで行う農家は限られています。そのため多良間牛は流通量が非常に少なく、まさに“幻に近い和牛”と言われます。
宮古牛との関係
宮古地域全体で育てられた黒毛和牛ブランドが「宮古牛」です。宮古島・伊良部島・池間島・来間島、そして多良間島も含まれます。
関係を整理すると:
- 多良間牛=多良間島完結型ブランド
- 宮古牛=宮古地域ブランド
- 全国ブランド牛=他地域で肥育された場合
つまり多良間牛は、条件を満たせば宮古牛にも含まれる存在です。
なぜ多良間島の子牛は評価されるのか
理由は環境にあります。多良間島は平坦で牧草栽培に適し、常に海風が吹き抜けるため温度と湿度が安定しています。過密飼育になりにくい小規模経営が中心で、一頭一頭に目が届く。広い環境で動くことで骨格が強く育ち、肥育段階での成長効率が高まります。
和牛の品質は霜降りだけではありません。健康な体づくりという“土台”が、最終的な味を決めます。
観光では見えない島の本当の姿
多良間島には大型リゾートも有名レストランも多くありません。それでも島の暮らしが続くのは、畜産という基幹産業があるからです。牛セリの結果は島の経済に直結し、価格が良ければ地域全体に活気が生まれます。
美しい海の裏側で、日本の食文化を支える産業が静かに動いている。それが多良間島の日常です。
多良間島は「和牛を食べる島」ではない
多良間島の価値は、完成されたステーキではありません。
朝の牧草地。
母牛の呼吸。
海風の中で生まれる子牛。
日本のブランド和牛の物語は、ここから始まります。
多良間島とは――
和牛が生まれ、日本へ旅立つ場所。
そして私たちが口にする一枚の肉の背景には、観光地ではない離島の静かな風景が広がっているのです。
✅ FAQ
Q1. 多良間牛とは何ですか?
A. 多良間島で生まれ、島内で肥育され出荷まで行われた黒毛和牛を指します。流通量が少なく希少な和牛です。
Q2. 宮古牛との違いは?
A. 宮古牛は宮古地域全体で育てられたブランド牛で、多良間牛はその中でも多良間島完結型の和牛です。
Q3. 多良間島の牛はなぜ全国へ送られるの?
A. 島では子牛生産が中心で、牛セリ後に鹿児島・宮崎などの肥育牧場へ移動し、約20か月かけてブランド牛へ育てられます。
Q4. 多良間島生まれの牛はどんなブランド牛になる?
A. 鹿児島黒牛、宮崎牛など九州各地のブランド黒毛和牛になる可能性があります。
Q5. 観光客は多良間牛を食べられる?
A. 島内で肥育される頭数が少ないため常時提供は少なく、出会えれば非常に貴重な体験です。
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