宮古島の水はどこから来る?|地下ダムがあっても安心とは言い切れない理由

【30秒で分かる】

宮古島には本州のような大きな川がなく、水道水のほとんどは地下水を利用しています。一方、「地下ダム」は主に農業用水を確保するための施設で、家庭やホテルで使われる水道水を直接供給しているわけではありません。近年は観光客の増加やホテル建設が進み、宮古島市も将来的な水需要の増加を見込んでいます。今回は、宮古島の命を支える「水」の仕組みについて、行政資料をもとに分かりやすく解説します。

宮古島には大きな川がない

宮古島を訪れたことがある人なら気付くかもしれません。本州では当たり前のように見かける大きな川が、宮古島にはほとんどありません。その理由は、島全体が水を通しやすい琉球石灰岩でできているためです。雨が降ると水は地表を流れる前に地中へ浸透し、そのまま地下水となって島の地下へ蓄えられます。つまり宮古島では、川ではなく「地下」が巨大な貯水槽の役割を果たしているのです。

私たちが使う水道水は地下水から生まれる

毎日何気なく使っている水道水。朝の歯磨きやシャワー、洗濯、料理はもちろん、ホテルの客室、飲食店、病院、学校など、島の暮らしは水なしでは成り立ちません。この水道水は、地下に蓄えられた地下水を井戸からくみ上げ、浄水場できれいに処理したうえで各家庭や事業所へ届けられています。蛇口をひねれば当たり前のように出てくる水ですが、その一滴一滴は、島に降った雨が長い時間をかけて地下へ浸透し、自然が育んだ貴重な資源なのです。

地下ダムは生活用水のためではない

「宮古島には地下ダムがあるから、水不足にはならない。」そんな話を聞いたことがある人も多いかもしれません。しかし、これは少し誤解があります。宮古島の地下ダムは、家庭へ水道水を送るための施設ではありません。地下ダムの目的は、農業用水を安定的に確保することです。宮古島では雨が降っても地下水がそのまま海へ流れ出やすいため、地下に止水壁を造って地下水をせき止め、農業に利用しています。現在、宮古島には福里地下ダム、砂川地下ダムなど、日本最大級の地下ダム群が整備され、サトウキビやマンゴー、葉タバコ、野菜など、島の農業を支えています。

つまり、

地下ダム=農業用水

水道水=地下水を取水して浄水した生活用水

という役割分担になっています。地下ダムがあるからといって、水道水が無限に使えるという意味ではありません。

宮古島市も「水需要は増える」と予測している

「将来も水は足りるのだろうか。」これは決して不安をあおる話ではありません。実際に宮古島市は、第4次地下水利用基本計画の中で、観光客の増加や関連産業の発展によって、水道需要は今後も増加すると予測しています。さらに、宮古島市上下水道部は2041年度までを見据えた長期水需給計画を策定し、観光客の増加、大型リゾートホテルの開業、下地島空港の利用拡大、渇水や自然災害への備えなどを踏まえながら、水道施設の整備や水源確保を進めています。つまり行政も、「今は足りている」ではなく、「将来も安定供給できるよう今から備える」という考えで動いているのです。

増えているのは市民より「営業用」の水だった

行政資料を見ると、さらに興味深い数字があります。ホテルや飲食店などの営業用水道使用量は、平成5年度 約117万立方メートルから令和元年度 約243万立方メートルへ、およそ2倍に増えています。さらに宮古島市は、営業用の日平均使用量についても、令和元年度 約5,778立方メートルから令和12年度 約8,341立方メートルまで増加すると予測しています。約44%もの増加です。

これは宮古島が国内有数のリゾート地へ成長してきた歩みと重なります。ホテルが建ち、ヴィラが増え、飲食店や観光施設が充実することで、多くの雇用が生まれ、地域経済も発展してきました。その一方で、水の利用量も確実に増え続けていることが、行政データから読み取れます。

今、水不足ではない。でも未来への備えは始まっている

ここで誤解してはいけないのは、「宮古島はすぐに水不足になる」という話ではないということです。現在、宮古島市は将来の需要を見据えながら水道施設の更新や整備を進めています。しかし、観光客の増加やホテル建設、気候変動による少雨など、これから先の環境は大きく変わる可能性があります。

だからこそ、「地下ダムがあるから安心」ではなく、「限りある地下水をどう守り、次の世代へつないでいくか」を今から考えることが大切なのです。宮古島の水は、蛇口をひねれば当たり前に出てくるものではありません。島に降る雨と豊かな自然、そしてそれを守り続ける人々の努力によって支えられている、大切な財産なのです。

宮古島の水は本当に足りる?観光の島だからこそ考えたい「水の未来」

観光客はついに年間126万人を突破

宮古島は今、日本でも有数のリゾート地へと成長しました。宮古島市が発表した2025年度の年間入域観光客数は126万3,397人。これは過去最多であり、2年連続で100万人を突破しています。台湾との国際線や国内線の回復も追い風となり、宮古島を訪れる人は今後もさらに増えていくことが期待されています。

人口約5万3千人の島に、年間では人口の20倍を超える人が訪れる計算になります。もちろん観光は宮古島の経済を支える大切な産業です。しかし、その一人ひとりが宿泊し、シャワーを浴び、食事をし、洗濯を行えば、水の使用量も確実に増えていきます。

ホテル建設ラッシュは今も続いている

観光客の増加とともに、宿泊施設も大きく増えています。沖縄県の「令和6年宿泊施設実態調査」によると、宮古島市には549軒の宿泊施設があり、県内で最も多い自治体となっています。客室数は6,679室で、那覇市に次いで県内2位。石垣市をわずかに上回る規模となっています。

さらに近年は、高級リゾートホテルやヴィラの新規開業も続いています。大型ホテルが1棟開業するだけでも数百室の客室が増え、そこへ毎日宿泊客が入り、レストランやランドリー、プール、スパなどが稼働すれば、水需要が増えるのは自然なことです。

宮古島市も「観光による水需要増加」を前提に計画している

宮古島市上下水道部は2026年、「長期水需給計画」を策定しました。計画では、大規模リゾート開発や下地島空港の国際線、観光客の増加などを踏まえ、**「観光業を基盤とする水需要は当面増加する見通し」**としています。

つまり行政も、「今後も観光によって水需要は伸びる」という前提で、水源の確保や浄水場、水道施設の更新などを計画的に進めています。現在の水需要だけではなく、10年後、20年後の宮古島を見据えた備えがすでに始まっているのです。

増えているのは家庭用ではなく営業用だった

宮古島市の地下水利用基本計画を見ると、さらに興味深い数字があります。ホテルや飲食店など営業用の年間水道使用量は、平成5年度 約117万立方メートルから令和元年度 約243万立方メートルへと、およそ2倍に増えています。

さらに将来予測では、営業用の日平均使用量は5,778立方メートルから8,341立方メートルへ、約44%増加すると見込まれています。

この数字が示しているのは、宮古島の将来の水需要増加をけん引するのは、市民生活よりもホテルや飲食店など観光関連施設になる可能性が高いということです。

宮古島が観光地として発展してきたことは、多くの雇用を生み、地域経済を支えてきました。その一方で、水の利用量も着実に増え続けていることが行政データから読み取れます。

観光と暮らしは対立するものではない

この記事を読んで、「観光客が悪い」「ホテルが悪い」と受け取ってほしいわけではありません。

観光は宮古島に多くの雇用を生み、飲食店やレンタカー、マリンショップ、タクシー、農業、水産業など、さまざまな産業を支えています。観光があるからこそ、島全体の経済が活性化し、多くの人の暮らしにもつながっています。

だからこそ大切なのは、「観光か、市民生活か」という対立ではなく、**観光を続けながら、限りある水資源も守ること。**その両立こそが、これからの宮古島に求められているのではないでしょうか。

水道施設も未来へ向けて更新が進む

水は地下からくみ上げれば終わりではありません。浄水場で安全な水へ処理され、配水池や送水管、ポンプ場など数多くの施設を経て、各家庭やホテルへ届けられています。

これらの施設も年月とともに老朽化が進み、更新や耐震化が必要になります。宮古島市の長期水需給計画では、新たな水源確保、施設更新、災害対策、節水活動などを重要な柱として位置付けています。

つまり、水を守るということは地下水だけを守ることではありません。安心して水を使い続けられるよう、水道インフラ全体を未来へ引き継いでいくことでもあるのです。

宮古島の水は本当に足りる? 観光の島だからこそ考えたい「水の未来」

全国の観光地も同じ課題に向き合っている

水資源と観光のバランス。この課題は宮古島だけのものではありません。日本各地の観光地でも、多くの観光客を受け入れながら、限りある水資源や水道インフラをどう守っていくのかが大きなテーマになっています。

人口を大きく上回る観光客が訪れる地域では、水道施設の維持管理や更新、水源の確保、災害への備えなど、多くの課題を抱えています。宮古島も観光立島として発展を続ける今だからこそ、全国の事例から学べることがあるかもしれません。

箱根町では宿泊施設と一般家庭で水道料金が異なる

その代表例の一つが、神奈川県箱根町です。箱根町では、水道料金が一般家庭・ホテルや旅館などの業務用・別荘用など用途ごとに区分され、それぞれ異なる料金体系が採用されています。

観光客が多く利用する宿泊施設は、一般家庭とは異なる料金体系となっており、観光によって増える水需要や水道インフラの維持費を踏まえた制度の一つとして運用されています。

もちろん、これは箱根町の地域事情に合わせた仕組みであり、そのまま宮古島へ当てはめられるものではありません。しかし、「観光で発展する地域だからこそ、水道事業をどのように支えていくのか」という考え方は、今後の宮古島を考える上で参考になる事例ではないでしょうか。

宮古島には宮古島の課題がある

宮古島には、本州のような大きな河川はありません。生活用水の多くは地下水に依存し、農業は地下ダムによって支えられています。

さらに近年は、年間126万人を超える観光客が訪れ、ホテルやヴィラの建設、大型リゾート開発も続いています。宮古島市も2041年度までを見据えた長期水需給計画の中で、観光需要の増加を前提に水道施設の整備や水源確保を進めています。

つまり行政も、「今は足りている」ではなく、「将来も安定して供給し続けるために今から備える」という考えで取り組んでいるのです。

水を守る方法は、水道料金だけではない

「では、水道料金を上げれば解決するのか。」

答えは、決してそうではありません。

限りある地下水を守る方法は、水道料金の見直しだけではなく、さまざまな選択肢があります。

例えば、ホテルへの節水設備の導入、節水型シャワーやトイレへの更新、雨水や再生水の活用、漏水対策の強化、水道施設の計画的な更新、観光客への節水啓発、市民一人ひとりの節水意識の向上などです。

全国や海外のリゾート地でも、このような取り組みは少しずつ広がっています。水資源を守るためには、一つの方法だけではなく、地域全体でできることを積み重ねていくことが大切です。

「観光か、市民生活か」ではない

この記事で伝えたいのは、「ホテルが悪い」「観光客が悪い」ということではありません。

観光は宮古島の経済を支え、多くの雇用を生み、農業や漁業、飲食業など地域全体にも大きな恩恵をもたらしています。

一方で、その発展を支えるためには、水という限りある資源を守り続けることも欠かせません。

だからこそ必要なのは、「観光か、市民生活か」という二者択一ではなく、**「観光も、市民生活も、農業も守るにはどうすればいいのか」**という視点です。

宮古島らしい発展の形を考えることが、これからますます重要になっていくでしょう。

未来の宮古島へ、水をつなぐために

宮古島市は現在、「水が足りなくなる」と発表しているわけではありません。しかし、市は観光需要の増加を見据え、将来に向けた水需給計画や施設整備を着実に進めています。

つまり、「今は大丈夫」だからこそ、「これからも大丈夫」であり続けるための準備が始まっているのです。

10年後、20年後、宮古島はさらに多くの人が訪れる世界的なリゾートになっているかもしれません。その時も、市民が安心して暮らし、農業が続き、観光客が宮古ブルーに感動できる島であり続けるためには、水という命の資源を守ることが欠かせません。

みゃーくずみ編集部より

蛇口をひねれば、水が出る。私たちは、その当たり前を毎日のように感じています。しかし、その一滴は、島に降った雨が長い年月をかけて地下へ浸透し、多くの人の努力によって安全な水として届けられています。

宮古島は、美しい海や豊かな自然だけではなく、その土台となる地下水によって支えられています。今回調べてみて感じたのは、「地下ダムがあるから安心」という単純な話ではないということでした。

行政はすでに将来の水需要を見据え、計画的な施設整備を進めています。そして全国には、箱根町のように宿泊施設と一般家庭で異なる水道料金体系を採用し、観光と水道インフラのバランスを図っている自治体もあります。

宮古島に同じ制度が必要かどうかは、現時点では分かりません。しかし、こうした事例を知り、「観光が発展する島で水資源をどう守っていくのか」を考えることには大きな意味があります。

私たちが大切にしたいのは、「観光か、市民生活か」という議論ではありません。

観光も、市民生活も、農業も、美しい自然も、すべてを未来へつないでいくこと。

限りある地下水を守ることは、宮古ブルーを守ることでもあり、島で暮らす人々の未来を守ることでもあります。

この特集が、宮古島の水について考えるきっかけになれば幸いです。

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編集者コラム・宮古島への想い