
🌊 塩と命の記憶を今に伝える
宮古島・七又海岸の「潮汲場」崖下に残された静かな祈りの場
沖縄・宮古島の東海岸。
断崖が続く荒々しい地形のなか、ひっそりと佇む「潮汲場(しおくみば)」は、かつて人々が自然と共生しながら生き抜いた証ともいえる、歴史の痕跡です。
海に囲まれながらも淡水や塩分に乏しかった宮古島。
この険しい七又海岸で、人々は命に関わる「塩」と「にがり(豆腐を固めるための苦汁)」を求めて、命がけで崖を下り、海と向き合ってきました。

💧 塩は命を支える“資源”だった
現在のように塩が簡単に手に入る時代とは異なり、かつての宮古島では塩を作るために海水を汲む作業そのものが日常の一部でした。
七又海岸の潮汲場は、そうした労働の場であり、女性たちが家庭のために塩やにがりを運ぶ姿が日常的に見られたといいます。
潮を汲むには、波打つ岩場を命綱もなく下り、重い桶や壺を担いで崖を登るという、想像を絶する重労働が必要でした。
その苦労の跡を今に残すのが、海岸の崖に造られた石階段と潮汲場跡です。

🪨 断崖の下に佇む潮汲場の構造と存在感
現在では整備された石階段が設けられ、下まで降りることは可能ですが、それでもその高さと急勾配には圧倒されます。
崖を下りきった先に見えるのが、海に張り出したコンクリート製の潮汲場跡。
海のしぶきを浴びながらも、静かにその存在を保ち続けています。
そばにある風化した石碑には、かすかに「潮汲場」の文字が残っており、それがこの場所がただの崖下ではないということを物語ります。
ここは自然に祈り、命の糧を得た場所であり、島人にとっての「聖なる労働の場」だったのです。

🌿 絶壁の下に広がる癒しの空間
この潮汲場が特別なのは、その歴史的価値だけではありません。
崖の下には、宮古島の他の海岸線には見られない、天然芝に覆われた開けた空間が広がっています。
青く透き通った海、空に続くような水平線、そしてそっと風にそよぐ緑の芝。
険しい自然の中にあって、不思議な安らぎを感じさせてくれる場所でもあります。
この対比こそが、七又海岸の潮汲場の魅力。
過酷な労働と、癒しの自然が同居する空間は、観光地というよりも「記憶の風景」として訪れる価値があります。

🎣 現在は静かな釣りスポットとしても
今日では、七又海岸の潮汲場は釣り人たちの穴場としても知られており、波と風の音しか聞こえないこの静かな場所を、地元の人々や歴史に関心のある旅行者が訪れています。
しかし、ここを訪れる際は単なる“映える場所”としてではなく、島の暮らしと祈りを支えた場であることを心にとめ、静かに歩いてみてください。
📍アクセスと見学のポイント
- 所在地:沖縄県宮古島市城辺七又海岸
- アクセス:市街地から車で約30分。Googleマップで「七又海岸 潮汲場」と検索可能
- 注意点:
- 階段は急で滑りやすい場所があるため、歩きやすい靴と水分補給を忘れずに
- 潮が高い日や荒天時は岩場に波が打ちつけ危険な場合もあるため注意
- 駐車場や案内表示は限られているため、事前の地図確認をおすすめします
✨ まとめ|潮と共に生きた記憶が息づく場所
七又海岸の潮汲場は、宮古島の厳しい自然に抗いながらも、暮らしを築いた人々の知恵と努力の証です。
風化してもなお残る石碑、波に洗われるコンクリートの台座、そして静かに広がる芝生の風景——。
この場所に立てば、観光では味わえない「島の過去」と「人の営みの重み」に出会えるはずです。
旅の途中で、少しだけ足を止め、潮の匂いとともに、宮古島の“暮らしの記憶”に耳を澄ませてみてはいかがでしょうか。
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