【30秒で分かる】宮古島沖の水深約105メートルで、日本と太平洋では初めてとなる希少な魚「コモレビアゴアマダイ」が確認されました。これまで世界では、2023年にミャンマー沖で確認された記録しかなく、今回が世界で2例目となります。緑がかった帯模様と背びれの黄色が、森の木々と木漏れ日を思わせることから、琉球大学の研究チームが「コモレビアゴアマダイ」という標準和名を提唱しました。宮古島の海には、私たちがまだ知らない生き物が数多く暮らしている可能性を示す、貴重な研究成果です。(琉球大学)

宮古島沖の水深約105メートルで希少魚を確認
宮古島の沖合で、これまで日本では確認されたことのなかったアゴアマダイ科の魚が採集されました。
魚の学名は「Opistognathus erdmanni(オピストグナトゥス・エルドマンニ)」。
今回の研究によって、新しい標準和名として「コモレビアゴアマダイ」が提唱されました。
発見したのは、琉球大学大学院理工学研究科博士前期課程の福島周さん、琉球大学理学部の千徳明日香准教授、小枝圭太助教らの研究チームです。
研究成果は、魚類学の学術雑誌「魚類学雑誌」に掲載されました。(琉球大学)
2025年5月の宮古島沖調査で採集
コモレビアゴアマダイが採集されたのは、2025年5月に宮古島沖で行われた生物採集調査です。
調査には、長崎大学附属練習船「長崎丸」が使用されました。
琉球大学理学部の実習科目「乗船実習Ⅰ」の一環として調査が行われ、宮古島沖の水深約105メートルで、ドレッジと呼ばれる小型の底引き網を使って海底付近の生物を採集しました。
その中に、これまで日本で記録されていなかったアゴアマダイ属の魚が含まれていました。
研究チームが体の模様や各部の特徴を詳しく調べ、過去の研究資料と比較した結果、2023年に新種として発表された「Opistognathus erdmanni」と一致することが確認されました。(琉球大学)

「新種発見」ではなく日本初記録
今回のニュースで注意したいのは、宮古島沖で新種の魚が発見されたわけではないという点です。
コモレビアゴアマダイは、2023年にインド洋のアンダマン海、ミャンマー沖で採集された標本をもとに、すでに新種として学術的に記載されていました。
今回の宮古島沖での発見は、その魚が日本の海域で初めて確認された「日本初記録」です。
同時に、太平洋側で確認された初めての記録でもあります。
これまで知られていた生息域から大きく離れた宮古島沖で見つかったことで、この魚がどの海域に、どのように分布しているのかを考えるうえでも重要な資料となります。(琉球大学)
世界でもわずか2例目の記録
コモレビアゴアマダイは、2023年にミャンマー沖のアンダマン海で発見されて以来、ほかの海域では記録されていませんでした。
最初の報告で確認されていたのは、ミャンマー沖の水深50~55メートルから採集された5個体だけです。
宮古島沖で採集された標本は、それに続く世界で2例目の記録となりました。
ただし「世界で2匹目」という意味ではありません。
正確には、この種類の魚が学術的な標本として確認され、研究報告された地域が世界で2例目ということです。
海の中には実際にはほかの個体も生息している可能性がありますが、発見や採集が難しいため、その詳しい分布や個体数はまだほとんど分かっていません。(琉球大学)
名前の由来は体に浮かぶ「木漏れ日」
コモレビアゴアマダイという美しい名前は、魚の体に見られる独特の色と模様から付けられました。
背びれの暗い斑紋から体の下方向へ伸びる、やや緑色がかった横帯が樹木を思わせ、背びれの縁に広がる黄色い部分が、森林の隙間から差し込む木漏れ日のように見えることが命名の由来です。
深さ約105メートルの海底で見つかった魚に、森の光景を連想させる「コモレビ」という名前が付けられたことも、今回の発見を印象的なものにしています。(琉球大学)
アゴアマダイは「ジョーフィッシュ」の仲間
アゴアマダイ科の魚は、英語で「ジョーフィッシュ」と呼ばれています。
名前の通り、比較的大きく発達した顎を持ち、その顎を使って砂や小石を運び、海底に巣穴を作って暮らします。
普段は巣穴の中に体を隠し、頭だけを外に出して周囲の様子をうかがいます。
危険を感じると、素早く巣穴の奥へ引っ込んでしまうため、海中で見つけることは簡単ではありません。
今回の研究対象となった魚も、海底の砂礫地に巣穴を作って生活すると考えられています。(琉球大学)
なぜこれまで見つからなかったのか
宮古島はダイビングやシュノーケリングの島として知られていますが、観光客が一般的に潜る海域と、コモレビアゴアマダイが見つかった水深約105メートルの世界は大きく異なります。
レジャーダイビングで一般的に利用される水深よりもはるかに深く、太陽の光も届きにくい場所です。
さらに、アゴアマダイの仲間は海底に作った巣穴に隠れて生活するため、通常の目視調査では見落とされやすい特徴があります。
研究者が船から専用の器具を海底へ下ろし、砂や小石とともに生物を採集して初めて見つかる種類も少なくありません。
宮古島の海が多くのダイバーに潜られてきたにもかかわらず、これまで確認されなかった背景には、水深と生態の両方が関係していると考えられます。(琉球大学)
宮古島沖の個体はより深い場所で見つかった
最初に確認されたミャンマー沖の標本は、水深50~55メートルで採集されました。
一方、宮古島沖の個体が見つかったのは水深約105メートルです。
単純に比較すると、宮古島沖の標本はミャンマー沖より約50メートル深い場所で確認されたことになります。
この違いだけで生息環境を断定することはできませんが、同じ種類の魚が想定以上に幅広い水深帯に生息している可能性を考える材料になります。
今後、周辺海域で追加の個体が確認されれば、水温、海底の砂や石の状態、水深、海流などとの関係が少しずつ明らかになる可能性があります。(琉球大学)
なぜミャンマー沖と宮古島沖で見つかったのか
最初の記録はインド洋側のミャンマー沖、今回の記録は太平洋側の宮古島沖です。
大きく離れた2つの海域で同じ種類が確認されたことは、この魚の分布を考えるうえで興味深い発見です。
現時点では記録が少なすぎるため、2つの海域の間に連続して生息しているのか、それぞれ限られた場所に分かれて生息しているのかは分かっていません。
幼魚の時期に海流によって移動するのか、これまで東南アジアや琉球列島周辺で見つけられていなかっただけなのかについても、今後の調査が必要です。
宮古島は、東シナ海と太平洋をつなぐ琉球列島の一部に位置しています。
さまざまな海流や海底地形が影響する海域であるため、今後も周辺海域の調査が進めば、コモレビアゴアマダイの分布を解明する新しい手掛かりが見つかるかもしれません。
標準和名とは
標準和名とは、日本国内で生物を呼ぶ際に、研究者や図鑑、博物館などで共通して使われる日本語の名称です。
地域によって呼び名が異なる魚も多いため、研究や情報共有で混乱しないよう、種類ごとに標準的な日本語名が定められています。
今回の研究によって、学名「Opistognathus erdmanni」に「コモレビアゴアマダイ」という日本語名が提唱されました。
正式な学術上の名前はラテン語形式の学名ですが、日本の多くの人に魚の存在を知ってもらううえで、親しみやすい標準和名は重要な役割を持ちます。
研究を担当した福島周さんは、世界で2例目という科学的な重要性に加え、この美しい魚に世界で初めて日本語の名前を贈ることができたことを光栄に感じているとコメントしています。(琉球大学)
宮古島の海は浅いサンゴ礁だけではない
宮古島の海といえば、宮古ブルーと呼ばれる透明な海、白い砂浜、サンゴ礁、ウミガメ、色鮮やかな熱帯魚などが知られています。
しかし、その魅力は私たちが海岸や水面から眺められる範囲だけではありません。
水深100メートル前後の海底には、浅いサンゴ礁とは異なる環境が広がり、まだ詳しく調査されていない生物が暮らしています。
今回の発見は、世界的な観光地となった宮古島の海が、学術研究の面でも大きな可能性を持つことを示しています。
観光客が目にする宮古ブルーのさらに下には、名前すら付いていない生き物や、日本で一度も確認されていない生き物が存在している可能性があります。
宮古島で見つかったことの大きな意味
今回の発見は、宮古島で珍しい魚が見つかったという話だけではありません。
これまでインド洋側でしか知られていなかった魚が太平洋側でも確認され、その生息域が大きく広がったことを示す重要な記録です。
また、海底の砂地や砂礫地は、サンゴ礁に比べると一見生き物が少ないように見えます。
しかし実際には、砂の中や巣穴を利用して暮らす多くの生物が存在しています。
目立つサンゴや大型魚だけでなく、海底の砂地を含めた環境全体を調べ、守っていくことの大切さも今回の研究から見えてきます。
研究と人材育成が生んだ発見
コモレビアゴアマダイは、大規模な新種探索プロジェクトだけで見つかったわけではありません。
琉球大学理学部の実習科目として長崎丸に乗船し、生物採集調査を行う中で発見されました。
大学で行われる乗船実習は、学生が実際の海で調査方法や標本の扱い、種類の見分け方などを学ぶ機会です。
その教育活動の中から、日本初記録、太平洋初記録、世界2例目という研究成果が生まれたことにも大きな意味があります。
海に囲まれた沖縄で学ぶ学生や研究者が地域の海を調査し、その成果を世界へ発信する。
今回の発見は、大学教育と地域の自然、学術研究がつながった成果でもあります。(琉球大学)
今後の調査で分かる可能性があること
現在、コモレビアゴアマダイについて分かっていることはごくわずかです。
世界で確認された記録がまだ2例しかないため、正確な生息範囲、個体数、繁殖方法、成長過程、食べ物、寿命など、多くのことが明らかになっていません。
今後、宮古島周辺や琉球列島、東南アジアの海域で追加調査が行われれば、これまで知られていなかった生息地が見つかる可能性があります。
似た種類と考えられていた標本の中に、この魚が含まれている可能性もあります。
博物館や大学に保存されている過去の標本を改めて調べることで、新たな記録が確認されることも考えられます。
採集された標本は研究の大切な証拠
生物の発見を学術的な記録として残すためには、写真だけでなく、種類を詳しく調べられる標本が重要です。
標本からは、体の長さ、骨格、ひれの形、鱗、色彩、斑紋などを詳しく確認できます。
将来、分類方法やDNA解析の技術が進歩した際にも、保存された標本を再調査できます。
今回採集されたコモレビアゴアマダイの標本も、宮古島沖にこの魚が生息していたことを示す科学的な証拠として、今後の研究に役立てられます。
観光の海から研究の海へ
宮古島の海は、泳ぐ、潜る、眺めるという観光資源として世界中の人を魅了しています。
一方で、海の生態系を調査し、その記録を後世に残す研究の場所でもあります。
海の環境が変化すれば、まだ存在すら知られていない生き物が、確認されないまま失われてしまう可能性もあります。
今回の発見をきっかけに、宮古島の海を「美しい観光地」としてだけでなく、「未知の生物が暮らす貴重な研究フィールド」として見る視点も広がりそうです。
まとめ|宮古島の海には、まだ知られていない世界がある
宮古島沖の水深約105メートルで採集された「コモレビアゴアマダイ」は、日本と太平洋では初めて、世界でも2例目となる非常に貴重な記録です。
緑がかった帯模様と背びれの黄色から、森林に差し込む木漏れ日をイメージして名付けられました。
今回確認された魚は新種ではありませんが、これまでミャンマー沖でしか知られていなかった種類の生息域を大きく広げる重要な発見です。
多くの人が知る宮古ブルーのさらに深い場所には、私たちがまだ名前も存在も知らない生き物たちの世界が広がっています。
コモレビアゴアマダイの発見は、宮古島の海の豊かさと、今後の研究によって明らかになる可能性の大きさを伝えるニュースとなりました。
※本記事は、琉球大学が2026年7月21日に公表した研究発表および、魚類学雑誌に掲載された研究成果をもとに構成しています。(琉球大学)



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