🕊 宮古島に刻まれた戦争の記憶と、今を生きる私たちへ —「知られざる沖縄戦」とチーム623の挑戦

青く澄んだ海と空が広がる宮古島。しかし、この美しい島にも、戦争という悲劇の記憶が静かに刻まれています。

■ 戦場にはならなかった島にも、戦争は確かにあった

太平洋戦争末期、宮古島は直接の地上戦に巻き込まれることはありませんでしたが、本土防衛のための軍事拠点とされ、多くの兵士が配備されました。そして、住民の生活は一変します。家屋の接収、避難生活、食糧不足、マラリアの流行――戦火を交えずとも、多くの命が失われ、戦争は島の暮らしに深く入り込んでいました。

2025年は沖縄戦終結から80年の節目。6月23日「慰霊の日」には、宮古島市でも戦没者追悼式と平和祈念式が開かれ、失われた命への祈りと平和への誓いが捧げられました。

■ 地元有志が伝える「宮古島の戦争」— 戦争劇『知られざる沖縄戦』

追悼式の後、マティダ市民劇場では、地元の有志団体「チーム623」による戦争劇『知られざる沖縄戦~宮古島の戦争の話~』が上演されました。

この舞台は、1944年の宮古島を舞台に、軍隊の到着によって日常が崩れていく家族の姿を描きます。母が娘に語る「死ぬ覚悟じゃなくて、生き抜く覚悟が必要なんだよ」という言葉は、静かに、しかし強く観客の心に響きました。

台詞の一部には宮古の方言「みゃーくふつ」が取り入れられ、観客の中には涙を流す人も。島で生きた人たちの「声なき声」を掬い上げるように、戦争の現実が舞台を通じて語られました。

■ 平和は“遠い誰か”の話ではない

戦争体験を知る世代が減っていくなかで、私たちはどう平和を語り継いでいけるのでしょうか。答えの一つが、この「チーム623」のような草の根の取り組みです。

演者の多くは地元で生活する人々。彼ら自身が“宮古島で起きた戦争”を学び、演じ、伝えるというプロセスそのものが、次の世代に受け継ぐための平和教育でもあります。

「戦争を繰り返してはならない」――この言葉がただのスローガンにならないように、島の中で生まれた記憶と声を、私たちも静かに受け取り、未来へと手渡していきたいものです。

📚 参考・出典

・宮古毎日新聞「知られざる沖縄戦~宮古島の戦争の話~」2025年6月24日掲載

・沖縄タイムス「宮古島市で慰霊の日追悼式」2025年6月23日掲載

・沖縄テレビ報道資料(伊良波小学校詩朗読関連)2025年6月23日