
💧 命をつないだ島の知恵の証
宮古島・伊良部島の歴史を物語る湧水遺産
― サバ沖井戸(サバウツガー) ―
サトウキビ畑を抜け、静かな道を下っていくと、伊良部島の東側・佐良浜集落の外れにひっそりと佇む史跡——サバ沖井戸(サバウツガー)。
ここは、宮古諸島の水の歴史、そして自然と向き合って生きてきた人々の知恵と営みを今に伝える貴重な場所です。

🌿 水に恵まれない島で生まれた“命の井戸”
宮古諸島は、隆起サンゴ礁でできた地形のため、地下に豊富な水を蓄えることができず、淡水はきわめて貴重な存在でした。
雨水を貯めるタンクやガー(井戸)は、生活を支える生命線。その中でも、サバ沖井戸は約240年間にわたって地域住民の生活用水を支えてきた、島にとってかけがえのない湧水地でした。
特に洗濯・清掃用の水として活用され、当時の女性たちは重い水桶を頭に載せ、片道123段の石段を上り下りしていました。その姿は、島の“働く女性たちの強さ”を象徴する風景として記憶に刻まれています。

🦈 「サバウツ」の地名に込められた自然観
「サバウツ」という地名の由来は、池間島側からこの場所を眺めた際、その地形が“サバ(サメ)の口”に見えたことにあります。
つまり、島の地名は自然の形状や景観から名づけられることが多く、それは宮古諸島に息づく自然信仰や土地との深い結びつきを示しています。
井戸を発見したとされるのは、伊良部島の二人の人物——「ミャーギ立の金大主」と「フッズゥーの松大主」。彼らの偉業は、島の歴史のなかで語り継がれています。

⛏️ 急勾配の石段が語る過酷な暮らし
井戸へと続く123段の石段は、かつて水を運ぶために日常的に使われていた道。今では整備されていますが、その勾配のきつさに、現代人は息をのむことでしょう。
かつては潮の満ち引きにより水位や塩分濃度が変動するため、サバ沖井戸の水は飲用には適していませんでした。それでも、生活に欠かせない水源として、村人たちにとっては**“水があるだけで奇跡”**だったのです。


🌊 眺望も素晴らしい“祈りの場所”
石段の途中や頂上付近からは、晴れた日には宮古島・池間島・来間島を一望する大パノラマが広がります。美しい景色に心を奪われながら、かつてここを何往復もした島の人々の姿を想像すると、旅の感慨もひとしおです。
今日、井戸そのものの湧水は枯れてしまいましたが、**「水を求めて生き抜いた歴史」**は今もこの場所に静かに息づいています。


📌 観光で訪れる際のポイント
- 所在地:沖縄県宮古島市伊良部字前里添
- アクセス:佐良浜港から車で約10分。周辺に駐車スペースあり。
- 所要時間:見学は約15〜20分ほど
- 服装・注意点:石段は滑りやすい箇所もあるため、歩きやすい靴で。夏は日陰が少ないため帽子・水分持参推奨
📝 まとめ|サバウツガーが伝えるもの
サバ沖井戸は、単なる古井戸ではありません。
それは、水に恵まれぬ島で“生きる”ために積み重ねられた努力、工夫、祈りの結晶です。
私たちがこの史跡に立つとき、そこには「島で暮らすことの厳しさ」と「自然と共に歩んだ人々の力強さ」が確かに残っています。
観光地としてではなく、**“文化遺産としての井戸”**を見つめることで、宮古島・伊良部島の旅がより深いものになるはずです。
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