
🌊 ピキャズ|自然が刻んだ“円”に秘められた、水と歴史の記憶
— 地下でつながる神秘と、英雄伝説が交差する、宮古島の静寂な聖地 —
宮古島の市街地からほど近い場所にありながら、その存在を知る人は少ない——それが、**神秘の池「ピキャズ(Pikyaazu)」です。
アクセスは「パイナガマ海空すこやか公園」の西側から。人工的な喧騒が遠のくほどに、足元の岩礁と潮騒が自然のリズムを奏ではじめ、やがて視界の先に忽然と現れる円形の“水の窪地”**が、訪れる者を静かに迎え入れます。

🌐 自然が造り出した完璧な円形——陥没ドリーネの奇跡
ピキャズは、石灰岩の地盤が侵食・陥没してできたドリーネ(陥没穴)の一種で、下地島の名勝「通り池」にも類似した地形ですが、規模は小さく、より親密な雰囲気を持ち合わせています。
岩礁の中にぽっかりと開いた円形の池は、アーチ状の横穴を通じて海とつながっており、潮の満ち引きによって水面が静かに変化します。
特に満潮時には、底まで透けるようなクリアなブルーが池全体を包み、まるで天然のレンズのように周囲の風景を映し込む幻想的な光景に。干潮時には、水位が下がることでサンゴのかけらや青いスズメダイなどの小魚たちが現れ、まるで“開かれた自然水族館”のような情景を生み出します。

🧭 池のまわりを歩くことで味わえる、刻々と変わる“色と静寂”
ピキャズの魅力は、水面の美しさだけではありません。
池の縁をぐるりと歩いてみると、場所ごとに水の色合い、光の反射、見える景色が微妙に異なり、ほんの数歩の違いでまったく異なる“表情”を見せてくれます。
陽が差す時間、曇りの日、風の有無——自然のコンディションがそのまま池の表情に現れるこの場所では、訪れるたびに新しい発見があります。カメラを構える人にも、心を鎮めたい人にも、それぞれの過ごし方ができるスポットです。

💧 地下水脈でつながる、伝承と名の由来
「ピキャズ」という不思議な名前は、地下で繋がる水脈にまつわる民話から来ていると言われています。
市街地にある湧水「降り井(ウリガー)」で失くした木桶が、後日この池で発見されたという逸話があり、島の人々はこの地を「地下水で繋がっている神秘の場所」として崇めてきました。
そのことが「ピキャズ(=桶が浮いた場所)」という名の由来とされ、水が“モノを運ぶ道”として認識されていたことがわかります。

👑 英雄・仲宗根豊見親の少年時代とピキャズの縁
さらに、この場所には**宮古島の偉人・仲宗根豊見親(なかそね・とぅいみや)**にまつわる伝承も残されています。
伝えによれば、豊見親がまだ「空広(そらびろ)」という童名の少年だった頃、このピキャズ近くの浜辺で、当時の首長“大立大殿”と運命的に出会ったとされています。
彼が浜辺で見せた聡明さと誠実なふるまいに心を打たれた大立大殿は、空広を養子として迎え、やがて島のリーダーへと育て上げたといいます。
このエピソードは、宮古島の歴史と精神文化においてピキャズが“始まりの地”でもあったことを物語っており、単なる自然景観以上の意味をこの場所に付与しています。
🍃 “ただの穴”ではない、“物語のある空間”
ピキャズは、一見すると単なる水たまりのような存在かもしれません。けれどその形は自然の浸食と陥没が生み出した奇跡の円であり、水の色は空と地質の反射が織りなす天然のアートであり、そしてその周囲には、人々が語り継いできた歴史と物語が静かに息づいています。
📍所在地:沖縄県宮古島市平良下里(パイナガマ海空すこやか公園からアクセス)
🚗 市街地から車で約5分。公園駐車場あり
📷 満潮時の透明な水面と干潮時の熱帯魚観察、どちらもおすすめ
※足場が岩場のため、滑りにくい靴での訪問を推奨
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